ハン・ジュンイルの日中韓山歩記(やまあるき)

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2015年9月7日
=日本の山059= 雄阿寒岳(おあかんだけ) コメント(0)読む・投稿する

↑双岳台から望む雄阿寒岳

 北海道釧路市北部、阿寒湖の東畔にそびえる雄阿寒岳は、南西に約15km離れた日本百名山の雌阿寒岳と比べれば標高も低く影が薄くなりがちですが、眺望の素晴らしさではおそらくこちらの方が格上ではないでしょうか。阿寒湖のほぼ全容が見渡せるだけでなく、頂上では阿寒湖の上流に当たるパンケトーとペンケトーが眼下に広がり、さらにその奥には屈斜路湖まで望めるという、なんとも贅沢なレークビューが楽しめます。


 かく言う私も当初は、雌阿寒岳を含む「道東日本百名山トリオ」の制覇を目指していたのですが、北海道に乗り込む1カ月前の2015年7月28日、雌阿寒岳の噴火警戒レベルが上がって登頂できなくなりました。航空券、レンタカー、宿泊先とすべて予約を終えてからそれを知った私にとって、雄阿寒岳登山はいわば失意の下の計画変更だったわけですが、この山は「保険」なんかにして本当に申し訳なかった、むしろ登山の機会を与えてくれた雌阿寒岳の入山規制に感謝すらしたい思いになりました。
 ちなみにアイヌ語でも、雄阿寒岳は「男の山」を意味するピンネシリ、雌阿寒岳は「女の山」を意味するマチネシリと呼ばれるそうです。


【登山日:2015年8月26日】
〜前日、斜里岳登山

 雄阿寒岳の登山口は阿寒湖南東畔の「滝口」。阿寒湖温泉の中心街から国道240号を3km余り東進した後、左折して未舗装の道に入って程ない所に十数台の駐車スペースがあります。阿寒湖名物・特別天然記念物のマリモの盗採禁止を呼びかける看板まで立っています。

 阿寒湖は阿寒川となって釧路湿原・太平洋へと流れていきますが、この滝口はちょうどその湖と川の境目あたり。まずは左手(北西)に阿寒湖の末端部を眺めながらの山行が始まります。波もほとんど立たず、午前中で日がよく当たるからか、湖面に逆さ樹林が鏡のように美しく映し出されています。


 平坦な道を10〜15分歩くと、右手(南側)に「太郎湖」が見えてきました。逆光でしたが、奥の方に咲いている黄色い花が湖面に反射し、優雅な彩りでした。

 この太郎湖の標識が紛らわしい場所に立っているため数分間杣道に迷い込んでしまったのですが、正規の登山道は太郎湖の北側湖畔を歩き切った後に北へと折れ、その後ほどなくして次郎湖への分岐があります。往復3分ほどで戻って来れるので、先に行ってみることにしました。ここもまた樹林帯の映り返りが見事です。

 登山口から40分弱、ようやく1合目の看板が見えました。この先も合目ごとに看板があるのですが、どういうわけか雄阿寒岳の登山コースは5合目までたどり着けば所要時間的には8合目ぐらいと同じとのこと。最初のうちは1合1合が長く感じられますが焦る必要はありません。

 4合目を過ぎると、木立の隙間から阿寒富士(1476m)と雌阿寒岳(1499m)が望めるように。

 5合目あたりから周囲の植生はハイマツ一色となり、いよいよ阿寒湖の大パノラマが待ち受けていました。宿泊施設が立ち並ぶ阿寒湖温泉の街並みはまさに「森と泉に囲まれて・・」といった雰囲気です。


 湖中の島の風景にも惹かれるものがあります。北端の方、琵琶湖で言えば竹生島と同じような位置にあるチュウルイ島には「マリモ展示観察センター」が立っていて、緑一色の島にちらりと姿を見せる六角形の屋根がコントラストとなって印象的です。

 一方で南の方に浮かぶ「小島」と「大島」も、あんなに盛り上がりのない平らな島によく樹木だけが生い茂っているもんだと感心させられました。

 見上げる山頂部の景色も緑一色。振り返れば雌阿寒岳と阿寒富士のシルエットが、阿寒湖温泉や広大な樹海の奥にそびえて、ますます北海道らしい雄大な景色になっていきます。


 8合目。なぜか終戦前後の2年間だけ職員が常駐していた気象観測所跡があります。ここまでたどり着くとオホーツク海の大海原、そしてどこまでも真っ直ぐな海岸線が手に取るように見渡せます。南東ではヒョウタン沼の湖面が大自然の中にポツリと小さく輝いています。



 8合目から山頂までは火口部の山容があらわに。雌阿寒岳とは違って雄阿寒岳は長い間火山活動が休止しているそうなのですが、それでもやはり今にも煙が噴き出してきそうな白砂の窪地があったりして、差し迫ってくるものがありました。


 火口部には、背中にリュックあるいは赤子を抱えて歩いている女性のようにも見える岩が突き立っていたりして、興趣をそそられます。

 標準タイムどおり約3時間で山頂に到達しました。雌阿寒岳より129m低い標高1370mですが、登山口との標高差は約950mで雌阿寒岳の主要登山コースよりも大きく、十分に登りごたえがありました。
 山頂の看板の奥、北側斜面の眼下にはまるでインベーダーのような横長の形をしたパンケトー、そしてその右(南東)側にペンケトーがあります。アイヌ語でそれぞれ「下の湖」「上の湖」という意味ですが、実際にペンケトー⇒パンケトー⇒阿寒湖の順に、三つの湖はそれぞれ細い川で繋がっています。以前は一つの湖だったのが、雄阿寒岳の噴火で岩石が堆積して水がせき止められたそうです。


 ペンケトーをじっくり眺めていると、何やら不思議な物体を確認しました。湖の東側、一ノ沢という川が流れ込む辺りに、荒波が打ち付けて突然凍ったかのような堆積物が見えます。動きは完全に止まっているので、塩か何かの結晶なのでしょうか・・・。ネットで調べてみても答えは分からないままでした。実際に湖畔まで行って確かめたいところですが、ペンケトー周辺は車道がなく、ヒグマ出没多発地域で歩道もほとんど整備されていないとのことで、その術がありません。

 下山時は海外の登山客に3組も出くわしました。この日は全体でも20組ほどしかいなかったので、かなりの比率です。前日訪ねた摩周湖でも3割程度は中華圏からの観光客でした。やはり北海道、特にこの阿寒国立公園一帯は世界的に見ても価値ある観光地なのでしょう。ぎりぎり30代のうちにその魅力の一端に触れられた喜びをかみしめつつ下山していきました。



 下山後は阿寒の自然をさらに満喫したいと、雌阿寒岳の西に位置するオンネトー(大きな湖、または親なる湖)へと足を運びました。展望デッキでは湖面の色も暗く、雌阿寒岳と阿寒富士の映り込みは見られなかったのですが、そこからわずか南へ500mほどの所で、ため息が出るほど鮮やかな「逆さ阿寒」を堪能できました。気象条件などによって様々に見た目が変わり「五色沼」とも呼ばれるオンネトーの七変化ぶりの一端に触れられた思いがしました。



 さらに南、片道1.4kmの遊歩道の先にある「オンネトー湯の滝」へも足を延ばしました。お湯というほどの熱さではなかったです。

 これでもかというほどの絶景に次ぐ絶景で、もうお腹いっぱい。日は沈んでいくのに、心はますます晴れやかになっていきました。



 阿寒での忘れがたい思い出として、前泊した宿のことも話しておかずにはいられません。阿寒湖畔の温泉街でもひときわ強烈な存在感を放つ「あかん遊久の里鶴雅」。あまりの施設の豪華さ、アメニティの充実ぶりに度肝を抜かれました。巨大温泉宿、いや「旅館型テーマパーク」と言った方がふさわしいかも知れません。細かいサービス面で多少の不満はあったものの、ハード面の完璧さが全てをかき消しました。雌阿寒岳が登頂できなくなったことも「次回またここに泊まれる楽しみが出来た」とポジティブに考えられたほどです。

 阿寒湖全体や雄阿寒岳を一望できる露天風呂はもちろん、それと同じぐらいに感動したのが、夕食に陶板焼でいただいた高級サーモン「大助(おおすけ)」。これまで食べてきた焼き鮭とは余りにも次元が違いすぎるやわらかい食感がたまりませんでした。

 この鶴雅リゾートと目と鼻の先、徒歩でわずかの所にあるのが「アイヌコタン」。アイヌの人々が住むコタン(集落・村)として北海道、もちろん全国でも最大規模を誇るといい、民芸品店や古式舞踊を鑑賞できる劇場などが立ち並びます。





 関西人の私にとって「あかん」という地名は長らく、言葉遊びの材料でしかありませんでした(苦笑)が、今回初めて訪ねてみて、もうそんなダジャレを思い浮かべることすらおこがましいと思えるほど、神々しい山々と湖、アイヌの伝統が色濃く残る風土、そしてマリモや摩周ブルーに代表される神秘性など、ここ阿寒国立公園でしか味わえない自然と文化に魅了されっぱなしでした。いずれまた雌阿寒岳が登頂できるようになれば、すぐにでも再訪したくなることでしょう。今後はますます日本を代表する観光地となって、東京や京都とは全く趣の違う日本の奥深さ、美しい自然をより多くの世界中の人に見に来てほしいものです。
 朝は西麓・阿寒湖温泉の湯舟から、夕方は次の宿泊先・川湯温泉へと向かう道中にある東麓の双岳台からその雄姿を拝み、まさに雄阿寒岳に始まり終わった一日でした。


▲これまでに紹介した山・名所一覧▲


★紅葉八十八カ所一覧★



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更新 2015年11月6日 11:57:44

登録タグ 北海道  アイヌ語
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